ノコギリヤシとは北米から中南米地域にかけて自生するヤシの一種です。
学名を「セレノア・レペンス」といい、高さ2mから4mほどの小さなヤシであり、秋の終わりから冬の初めにかけてオリーブほどの大きさの赤黒い果実をつけることが特徴です。
アメリカ大陸で古くから生活してきた先住民たちはこの果実から油を搾り、食用油やランプの灯油として用いていました。
また彼らは、乾燥させたこれらの果実を精力回復や健康を維持するための常備薬としても用いていました。
19世紀になりアメリカ大陸に移住してきたヨーロッパの人々が、ノコギリヤシの果実を先住民たちが利尿剤や強壮剤として用いていることを発見し、これらの果実について研究をしたところさまざまな効能を発見しました。
20世紀から現代にかけて、ノコギリヤシは前立腺肥大症の治療薬として研究されています。
前立腺肥大症とは膀胱の下に位置し尿道を取り囲むようにして存在する前立腺という臓器が、加齢とともに細胞数が増加し肥大する症状です。
この前立腺が肥大することによって、尿道が圧迫されたことに起因する排尿困難を主とする症状と、尿道閉塞により二次的に刺激を受けた膀胱の機能変化(具体的には収縮力の低下)に伴った症状を発症してしまいます。
この症状を発症した患者は具体的には複雑多様なさまざまな症状を発症することになります。
具体的には「排尿開始遅延」、尿腺が細くなり尿がチョロチョロとしか出なくなる「尿腺細小」、排尿時尿が散ってしまう「尿腺分裂」、排尿の終末時、尿がぽたぽたとしか出なくなってしまう「排尿終末時滴下」、排尿直
後に尿がまだ残っている感じがする「残尿感」、常に尿意が襲ってくる「尿意頻拍」、「頻尿(夜間に頻尿になる症状を「夜間頻尿」といいます)」、濁った尿が排出される「尿混濁」、尿がほとんどでなくなる「尿閉」、「腎機能低下」などです。
ノコギリヤシの果実には脂肪酸やフィトステロールという成分が含まれているので、その抽出物は年齢とともに乱れた男性ホルモンのバランスを整え、上記のような前立腺肥大症に伴う症状を抑制する効果があるとされています。